交通事故の被害者は、加害者の保険会社からの賠償金額の提示にどう対応すればよいか

交通事故の被害者は、加害者の保険会社からの賠償金額の提示にどう対応すればよいか

〔交通事故で請求できる損害の内容〕
 交通事故の被害者は、加害者に対して、事故で被った損害の賠償を請求することができます。
 この損害の内容については、事故の種類(死亡事故 or 傷害事故 or 物損事故)にもよりますが、以下の4つが主なものになります。

  1. 治療費や通院交通費(電車代、バス代、ガソリン代)などの実費
  2. 休業損害(入院や治療のため仕事を休んだことによる収入の喪失分)
  3. 死亡や後遺障害による逸失利益(事故がなければ将来得られたであろう利益の喪失分)
  4. 精神的損害(入通院治療を余儀なくされたこと、後遺障害を負ったこと、死亡したことに対して支払われる慰謝料)

 

〔保険会社基準による金額提示と裁判基準〕
 交通事故によって生じた損害について、被害者は加害者の保険会社と示談交渉をすることになります。この際、保険会社は、いわゆる「保険会社基準」と呼ばれる保険会社独自の支払基準に従って金額を算定し、その合計額を被害者に対して提示してきます。
 しかし、この保険会社基準は、保険会社が保険金の支払いをできるだけ少なくしようとするための独自の基準ですから、裁判所で交通事故の事件が審理される場合に用いられる基準(裁判基準や弁護士会基準と呼ばれます。)よりもかなり(3割から5割程度)低くなっています。
 このようなダブルスタンダードが存在しているわけですが、弁護士に交通事故の事件を依頼した場合は、当然、裁判基準(弁護士会基準)に従って損害賠償額を算定し、保険会社と交渉することになります。保険会社は、自社の基準が裁判基準よりも低いことを知っていますので、弁護士が示談交渉に入ってくれば、それだけで、かなり支払金額を上積みしてきます。もちろん、弁護士が受任した後の交渉でも満足な金額の提示がなく、折り合いがつかなければ、実際に裁判手続に移行し、裁判基準での和解による解決や判決を取得することになります。

 

〔弁護士に交通事故の事件を依頼するメリット・デメリット〕
 交通事故事件においては、弁護士に依頼することで、保険会社からの提示金額を、すぐに、しかもかなりの額上げさせることができ、より高額の損害賠償を勝ち取ることが可能になります。
 もちろん、弁護士に依頼することで弁護士費用はかかりますので、元々の損害額があまり大きくない場合(目安として100万円に満たない場合)には、賠償額が増えたとしても弁護士費用で帳消しになってしまう可能性がありますが、ある程度損害額が大きい場合には、弁護士費用を払っても十分ペイすることになります。
 また、弁護士に依頼して裁判手続を行えば、通常、損害額の10%が弁護士費用として別途プラスされますので、その限度であれば加害者側に弁護士費用を負担させることもできます。
 さらに、自動車保険の弁護士費用特約に加入している方は、それを利用することで弁護士費用の全部あるいは一部をまかなうこともできます。
  したがって、安易に保険会社の提示金額で示談してはなりません。示談をしてしまうと、後で「やっぱり納得がいかない。」と思っても、示談内容をくつがえすことは大変困難です。保険会社からの提示金額に安易に応じることなく、弁護士に依頼することによるメリットとデメリットをよく考えて決断することが大事ですので、まずはお気軽に相談ください。

(2022年12月1日)