〔FXの2つの特徴〕
FXは、外国為替証拠金取引とも呼ばれる金融商品取引ですが、①「差金決済取引」と②「レバレッジ取引」という2つの特徴を持った外国為替の取引になります。
まず、①「差金決済取引」というのは、外貨の売買代金の受け渡しを行わずに、反対売買(買った後に売るor売った後に買う)によって、売買によって生じた差額(損益)だけを受け渡す取引であるということです。通常の外貨の取引では、購入する場合は代金を支払い、売却する場合は代金を受け取ることになりますが、差金決済取引であるFXでは、そのようなことは行われません。
次に、②「レバレッジ取引」というのは、投資家が預け入れた金額(証拠金)以上の規模の金額の取引ができるということです。そして、金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項27・28号、7・8項において、想定元本(為替レート×通貨単位)の4%以上の証拠金が必要とされていますので、日本のFX取引における最大のレバレッジは25倍ということになります。
〔店頭FXと取引所FX〕
FXのうち、取引所を介さずに、顧客とFX業者の相対取引で行われ、取引相手となるFX業者によって、取引可能な通貨ペアなどの取引条件が異なるものを「店頭FX」と言います。店頭FXは、店頭デリバティブ取引として、第一種金融商品取引業の登録が必要になります。
これに対して、FXのうち、金融商品取引業者を通じて、金融商品取引所に上場されているFX取引を行うものを「取引所FX」と言い、日本では、東京金融取引所の「くりっく365」という商品があります。「くりっく365」は、取扱会社(「取引参加者」と「取次者」と「金融仲介業者」の3種類)を通じて取引ができますが、顧客の委託を受けて取引を行う場合、有価証券以外の市場デリバティブ取引として、第二種金融商品取引業の登録が必要になります。
〔FX取引の無登録営業〕
日本に居住する投資家に対してFX取引を業として行うには、金融商品取引業の登録が必要です。この場合、外国の証券会社が外国における金融ライセンスを有しているかどうかは関係ありません。日本の投資家に向けてFXを行う以上は、日本の金融商品取引法に基づく登録が必ず必要になります。
この点については、金融庁の監督指針「Ⅹ-1-2 外国証券業者によるインターネット等を利用したクロスボーダー取引」に以下のとおり明示してあります。
『外国証券業者がホームページ等に有価証券関連業に係る行為に関する広告等を掲載する行為については、原則として、「勧誘」行為に該当する。
ただし、以下に掲げる措置を始めとして、日本国内の投資者との間の有価証券関連業に係る行為につながらないような合理的な措置が講じられている限り、国内投資者に向けた「勧誘」には該当しないものとする。
(1) 担保文言
日本国内の投資者が当該サービスの対象とされていない旨の文言が明記されていること。
(略)
(2) 取引防止措置等
日本国内にある投資者との間の有価証券関連業に係る行為を防止するための措置が講じられていること。
上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。
①取引に際して、投資者より、住所、郵送先住所、メールアドレス、支払い方法その他の情報を提示させることにより、その居所を確認できる手続を経ていること。
②明らかに日本国内の投資者による有価証券関連業に係る行為であると信ずるに足る合理的な事由がある場合には、当該投資者から注文に応ずることのないよう配意していること。
③日本国内に顧客向けのコールセンターを設置する、或いは国内投資者を対象とするホームページ等にリンクを設定する等を始めとして、日本国内にある投資者に対し有価証券関連業に係る行為を誘引することのないよう配意していること。』
つまり、外国のFX業者が、日本国内の投資家との間で取引が行われることがないようにするための合理的な措置を適切に講じている場合に限って、日本の金融商品取引法に基づく登録は不要ですが、そうでない場合(要するに、日本の投資家が普通にFX取引ができてしまうような場合)は、原則どおり、登録が必要ということになります。
(2022年9月19日)