仕組債のワナ

仕組債のワナ

〔仕組債とは〕
 一般的な債券に、デリバティブ(オプションやスワップなど)を組み合わせることで、満期、利子、償還金などについて様々な条件設定を可能にしたものを仕組債といいます。
 単なる債券だけでは、安全性が高い一方で収益性が低くなるため、ハイリスクなデリバティブを組み合わせることによって収益性を高くする(投資家は、オプションなどの売り手となって、高めの金利などを受け取れることになります)ものですが、債券であるにもかかわらず、実はハイリスクな金融商品となってしまいます。
 このような一見すると「ローリスクでハイリターン」に見える仕組債の真の危険性に気づかないまま、高齢者を中心とした多くの投資家が多額の損失を被るケースが相次いでいます。

 

〔仕組債の主な種類〕
株価指数連動債
 日経平均株価などの参照する指数の変動によって、償還額や利率が変動したり、早期償還条項が付いている場合には満期前に償還したりする可能性のある債券
EB債(他社株転換可能債)
 償還日までの株価変動によっては、満期日に償還金(金銭)が支払われる代わりに、債券の発行者とは異なる会社の株式(他社株)が交付される結果となる債券

 

〔EB債の商品内容のポイント〕
①受け取れる金利
 最初の数回は固定で高率ですが、それ以降は、利率決定日における対象株式の株価の終値によっては低率の金利となる場合があります
②早期償還となってしまう場合(満期前に取引が終了する場合)
 対象株式の株価の終値が当初価格より少し上回った場合は早期償還(=ノックアウト)となり、額面金額で返ってきますが、償還されたので、それ以降は高率の金利は受け取れなくなります
③早期償還することなく、満期償還となった場合
 対象株式の株価が、満期までの間に一度でも当初価格の所定の割合以下になれば(=ノックイン)、満期に、株式(当初価格で計算した株式数)+調整現金で返ってくることになります。
 他方で、対象株式の株価が、満期までの間に一度も当初価格の所定の割合以下にならなければ(ノックインしなければ)、額面金額で返ってきます
④償還年限
 償還年限が長ければ長いほど、ノックインする確率が高くなりますので、株価の下がった株式で返ってくる可能性が高くなって、より危険と言えます

 

〔投資家にとってのEB債〕
①最高の展開(高い金利の継続+元本の回収)
 償還年限までずっと、対象株式の株価が、高率の金利が受け取れて、かつノックアウトしない幅で推移し続けて満期償還となれば、高率の金利をずっと受け取りつつ、投資元本もそのまま返ってくることになり、投資家にとっては最高の展開になりますが、株価がそのような絶妙な幅で推移し続けることはあまり期待できません
②最悪の展開(低い金利が継続+株式の返還で元本割れ)
 対象株式の株価が、いきなり下落して低率の金利しか受け取れない状態となり、さらに株価が下落してノックインとなり満期を迎えたため、株価が下落した株式(当初価格で計算された株式数)で返ってくることになり、その後も、この会社の株価は低空飛行を続けている場合が、投資家にとっては最悪の展開になります。

 

〔仕組債特有のリスク〕

  • あらかじめ定められた参照指標(株価など)に基づき利子(クーポン)が決定される仕組債については、参照指標の変動により受け取る利子が減少する可能性があります
  • あらかじめ定められた参照指標(株価など)に基づき償還金額が決定される仕組債については、参照指標の変動により償還金額が変動し、償還金に差損が生じる可能性があります
  • EB債では、参照指標の変動により、償還金の支払に代えて他社株式などの有価証券で償還される場合があり、その株式の時価によっては、実質的な償還金額が投資元本を下回り(元本割れ)、損失が生じる可能性があります。また、交付された株式の時価がさらに下がることにより、損失が拡大するおそれもあります。
  • 仕組債は、通常、償還まで保有することを前提としており、途中で売却できたとしても、売却価格が著しく低くなって、投資元本を下回る可能性が高くなります

(2022年9月16日)