新しい相続財産管理制度(改正民法・令和5年4月~)

新しい相続財産管理制度(改正民法・令和5年4月~)

〔相続財産を管理するための統一的な制度の必要性〕
 相続が開始しても、相続人が管理を行わないために、相続財産となっている土地などが放置され、周辺に迷惑をかけてしまうようなケースがあります。
 このような場合に、相続財産を管理するための制度が改正前の民法にもいくつかありますが、相続における様々な場面を統一して設けられた規定ではなく、虫食い的な規定になっていました。
 例えば、相続人が明らかでない場合における相続財産管理制度は、相続財産の「清算」を目的とした管理であり、手続的に重いというデメリットがあります。また、相続の単純承認から遺産分割までの間に利用できる相続財産の管理制度もありません。
 そこで、これらの虫食い的な規定によって欠けていた部分も含めて、相続財産を管理するための統一的な制度として、新たな相続財産管理制度がつくられました。
 なお、これによって、改正前からあった相続人が明らかでない場合の清算を目的とした相続財産の「管理人」については、相続財産の「清算人」と呼び方が変わることになりました(952条)。

 

〔新しい相続財産管理制度の概要〕
 家庭裁判所は、利害関係人などの請求によって、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができます。したがって、相続人が保存行為をしなかったり、相続人が明らかでなく、相続財産の価値や状態を維持することが困難であるような場合が、相続財産管理制度の対象となります。
 ただし、相続人が一人の場合で単純承認をしたときや、相続人が数人の場合で遺産全部の分割がされたときや、相続財産の清算人が選任されているときは、相続財産管理制度の対象にはなりません(897条の2・1項)。
 新しい相続財産管理制度によって選任された相続財産管理人は、保存行為と相続財産の性質を変えない範囲での利用・改良行為のみを行うことができ(897条の2・2項→28条→103条)、これを超える行為が必要なときは、家庭裁判所の許可を得なければなりません(897条の2・2項→28条)。
 また、家庭裁判所は、相続財産の中から相当な報酬を相続財産管理人に与えることができます(897条の2・2項→29条2項)。

 

〔所有者不明土地・建物管理制度との関係〕
 相続財産に属する土地や建物があり、その所有者(つまり相続人)の所在などが不明な場合には、その土地や建物の管理のために所有者不明土地・建物管理命令の制度を利用することもできますので、新しい相続財産管理制度と重なる部分があります。
 もっとも、新しい相続財産管理制度は、相続人の所在がはっきりしているものの管理を行わないようなケースでも利用できますし、土地や建物以外の相続財産も含めて管理の対象になるといった違いがあります。

(2023年1月22日)