交際相手が実は既婚者だった場合〔その1〕~交際相手に損害賠償請求はできるのか?~

交際相手が実は既婚者だった場合〔その1〕~交際相手に損害賠償請求はできるのか?~

自分の交際相手が、「独身だと言っていたのに、実は既婚者だった」という場合、真剣に交際をしていた側からすれば、大きなショックを受けて当然です。
特に最近は、いわゆるマッチングアプリで男女が出会うことも多くなっています。そして、マッチングアプリは、通常、利用規約上は既婚者による利用を認めていませんが、その裏付け(戸籍等による独身であることの確認)を取っているわけではありませんので、既婚者が独身を装って登録することは容易です。

 

〔損害賠償請求は認められるのか〕
 結論から言えば、実は既婚者であった交際相手に対する損害賠償請求が認められる可能性は十分あります。
 例えば、東京地裁令和2年3月2日判決は、既婚者であるB男と、男女間でのパートナー探しを目的としたサイトを通じて知り合い、男女の交際をしたA女が、B男が、独身男性をかたり、結婚を前提に交際したいなどと虚偽の甘言を述べて性的関係をもったことが、A女の人格権や貞操権を侵害する不法行為に該当すると主張して、損害賠償金330万円を求めた事案において、以下のとおり判示し、損害として慰謝料50万円と弁護士費用5万円(なお、裁判所では、不法行為が認められる場合、損害額の1割だけを弁護士費用として認める運用になっています)を認めています。

「B男は、A女に対し、既婚者であることを隠して、自身のプライベートを打ち明けるかのような言動をしてA女に信頼感を与えたり、A女との結婚をほのめかす発言をしたりして、A女を誤信させ、B男との婚姻に対する将来への期待も抱かせて、A女と交際関係を持つに至り、複数回にわたって性交渉に及んでいたのであるから、B男がA女の貞操権を侵害したものと認められる。・・・したがって、B男はA女に対して不法行為責任を負う」

 

〔損害賠償請求が認められるためのポイント〕
 以下の6つのポイントをクリアしていれば、損害賠償請求が認められる可能性は非常に高くなります。損害額としては、慰謝料(精神的損害)として50万円から100万円くらいが相場ですが、個々のケースによって異なります。

  1. 交際相手が既婚者であることを知らないまま交際を続けていたこと
  2. 交際相手が、自分は独身であると積極的に偽っていたこと
  3. 交際期間がある程度長いこと
  4. 結婚や子どものことなど、真剣な交際を前提とした話をしていたこと
  5. 性的関係を持っていたこと
  6. 交際相手が既婚者であると気づいた後は、交際をやめたこと

(2022年9月27日)