生命保険の死亡保険金がある場合の相続における扱い

生命保険の死亡保険金がある場合の相続における扱い

〔死亡保険金は相続財産になるのか〕
 人が亡くなると相続が発生しますが、亡くなられた方が生命保険の被保険者となっていた場合、死亡保険金が発生することになります。
 この死亡保険金が仮に相続財産になるのであれば、保険金は他の遺産と同じように相続人に引き継がれることになりますが、相続財産になるかどうかは、誰が保険金受取人に指定されているかによるとされています。
 なお、相続税に関して、保険金を相続によって取得したとされるかどうかは、これとは別の問題になります。

 

〔パターン① 「特定の人」を保険金受取人に指定していた場合〕
 この場合は、指定された人が、保険契約に基づく権利として保険金請求権を取得することになりますので、保険金は相続財産には含まれません。
 もっとも、「特定の人」が相続人のうちの誰かである場合、保険金を受け取った相続人(=特定の人)と受け取っていない相続人との間で、不公平ではないかと思われるケースが出てきます。というのも、保険金請求権は、被相続人が生前に保険料を支払っていたからこそ生じるものであり、保険料を支払っていなければ、それはそのまま遺産として残っていたとも言えるからです。
 この点に関して、最高裁平成16年10月19日決定では、原則として、共同相続人の一人が受取人とされる生命保険金は特別受益にはあたらないとされ、持戻し(相続財産として計算上加算すること)の対象とはならないとされています。
 ただし、例外的に、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が、民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しい特段の事情がある場合には、死亡保険金について、特別受益に準じて考え、「持戻し」の対象となるとしました。そして、特段の事情があるかどうかについては、ⅰ)保険金の額、ⅱ)保険金の額の遺産総額に対する比率、ⅲ)同居の有無、ⅳ)被相続人の介護などに対する貢献度などを総合的に考慮するとしています。
 したがって、例えば、保険金の額が高額で、遺産総額に比べて生命保険金の比率が高いようなケースでは、例外的に特別受益にあたるとして、計算上、保険金額が相続財産に加算される可能性が出てきます。 

 

〔パターン② 「相続人」を保険金受取人に指定していた場合〕
 この場合は、原則として、被保険者が亡くなったときの相続人が受取人として指定されたことになり、相続人が保険契約に基づく権利として保険金請求権を取得することになりますので、やはり、保険金は相続財産には含まれません。
 そして、受取人が受け取れる額は法定相続分の割合によることになりますので、パターン①の場合とは異なり、相続人の間で不公平になるケースは考えにくいと言えます。
 なお、保険金受取人が指定されていないケースで、保険約款の中に「被保険者の相続人に支払う」旨の条項がある場合もこれと同様に考えることができます。

 

〔パターン③ 「自分」を保険金受取人に指定していた場合〕
 この場合は、受取人である自分が亡くなっているわけですので、保険金は相続財産に含まれることになり、相続手続(民法の規定)に従って、相続人に引き継がれることになります。

(2022年10月31日)