裁判による共有物分割に関する改正(令和5年4月~)

裁判による共有物分割に関する改正(令和5年4月~)

〔裁判による共有物分割ができる場合〕
 改正民法により、裁判所で共有物分割ができる場合として、「共有者間に協議が調わないとき」だけでなく、「協議をすることができないとき」が条文で追加されました(258条1項)。
 これは、分割協議をした上で話がまとまらなかった場合だけでなく、協議に応じない共有者がいる場合も要件を充たす点を条文上明らかにするもので、実質的な変更があるわけではありません。

 

〔裁判による共有物分割の方法〕
 改正民法により、裁判所は、共有物分割の方法として、現物分割か賠償分割(共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法)の方法で行うことができると明記されました(258条2項)。これは、賠償分割の方法を認めていた最高裁の考え方を明文化したものになります。
 この現物分割と賠償分割の方法に優先順位はありませんが、これらの方法による分割ができなかったり、分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、競売分割を命ずることができる(つまり、競売による分割は補充的な位置づけになります。)とされています(258条3項)。

 

〔遺産分割と共有物分割〕
 相続人の間で遺産分割をすべき相続財産に属する共有物の全部またはその持分については、原則として、裁判による共有物分割をすることはできません(258条の2・1項)。つまり、遺産共有状態を解消するためには、遺産分割の手続によらなければならないのが原則になります。
 ただし、相続開始から10年を経過していれば、遺産分割上の権利を長い間行使してこなかったわけですから、例外として、相続財産に属する共有物の持分については裁判による共有物分割ができるとされています。これに対して、相続人が共有物分割の方法ではなく、遺産分割の方法を望むのであれば、遺産分割の請求をした上で、共有物分割訴訟についての裁判所からの通知を受けた日から2ヶ月以内に、共有物分割への異議を申し出なければなりません(258条の2・2項、3項)。
 なお、この例外規定が使えるのは、共有物の「持分」が相続財産に属する場合なので、共有物の「全部」が遺産共有状態にある場合には使うことができません。言い換えれば、この例外規定は、遺産共有と通常の共有が併存している場合に使えるものになります。したがって、元々、単独所有だった者がいて、その後の相続により遺産共有となったケースでは、この例外規定に基づいて共有物分割手続を使うことはできません。

(2022年12月25日)