共有物の使用・変更・管理に関する改正(令和5年4月~)

共有物の使用・変更・管理に関する改正(令和5年4月~)

〔共有物の「使用」に関する改正〕
 共有物の使用に関して、改正前の民法では、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができると規定されているだけでしたが、改正によって、以下の2点が追加されました。もっとも、この2点の内容は、条文上明確にされたという面が強く、実質的にはあまり変わらないものと思われます。

  1. 共有物を使用する共有者は、別段の合意(「無料で使用してもよい」という合意など)がある場合を除いて、他の共有者に対し、持分の割合に応じた使用の対価を支払わなければなりません(249条2項)
  2. 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければなりません(249条3項)。つまり、共有物を使用している共有者は、他の共有者との関係では他人の物を使っていることになりますので、いわゆる善管注意義務を負うことになります。したがって、この義務に違反して、他の共有者に損害が発生すれば、損害賠償責任を負うことになります。

 

〔共有物の「変更」に関する改正〕
 改正前の民法では、共有物に「変更」を加えるためには、すべての共有者の同意が必要と規定されていましたが、ここでいう「変更」が具体的に何を意味するのかについては何も規定がありませんでした。そのため、実務上は、「変更」にあたる可能性がありそうな行為については、念のため、共有者全員の同意を得ておくという対応が求められることになり、共有物の修繕や改良などが滞る原因となっていました。
 そこで、改正により、共有物の変更行為のうち、形状(外観や構造など)または効用(機能や用途)の著しい変更を伴わない場合(いわゆる「軽微変更」の場合)は、通常の管理と同じく、持分価格の過半数で決めてよいことになり(251条1項かっこ書き、252条1項)、形状や効用の著しい変更がある場合のみ、共有者全員の同意が必要となりました(251条1項)。この結果、例えば、砂利道のアスファルト舗装や防水工事などについては、基本的に軽微変更として過半数で行うことができることになります。
 また、共有者全員の同意が必要になる変更について、共有者の中に所在などが不明の者がいる場合には、裁判所は、共有者の請求により、不明者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができるようになりました(251条2項)。

 

〔共有物の「管理」に関する改正〕
 共有物の管理に関して、改正前の民法では、管理行為については持分価格の過半数で決し、保存行為は各共有者が単独で行うことができると規定されていました。
 改正後は、前述のとおり、軽微変更も「管理」の中に含まれるとした上で、この基本的な枠組が維持されていますが、共有物を使用する共有者がいる場合に関して、以下の2点が明記されました。

  1. 共有物を事実上(=共有者間で使用方法が定められていないにもかかわらず)使用する共有者がある場合でも、持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できます(252条1項後段)
  2. 共有者間で使用方法が定められている場合であっても、持分価格の過半数によって、使用方法の定めを変更できます(252条1項後段)が、この場合は、従前の使用方法に関する定めに基づいて共有物を使用する共有者がいますので、その共有者に特別の影響を及ぼすような変更になるときは、その承諾を得なければなりません(252条3項)。

 また、一部の共有者やその所在が不明の場合、あるいは、一部の共有者が共有物の管理についての賛否を明らかにしない場合に、裁判所は、それ以外の共有者の持分価格に従って、その過半数で管理に関して決めることができる旨の裁判ができるようになりました(252条2項)。所在不明の共有者や賛否を明らかにしない共有者について賛成したものとみなしているわけではなく、過半数計算の分母から除外するという考え方になっている点に注意して下さい。

(2022年12月16日)