現状有姿売買と契約不適合責任

現状有姿売買と契約不適合責任

中古住宅の売買契約などで「現状有姿のまま引き渡す」という条項が設けられることが多くあります。このような、いわゆる「現状有姿売買」において、引き渡し後に住宅に何らかの不具合が見つかった場合に、買主は、売主に対して、民法の定める契約不適合責任を追及できるのでしょうか?

 

〔契約不適合責任とは〕
 売買契約において、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」場合に生じる売主の責任のことを契約不適合責任と言います。
 この契約不適合責任により、売買契約の当事者が予定していた契約内容と実際に引き渡された物との間に不適合がある場合に、買主は、売主に対して、以下の4つの責任を追及することができます。
 ①追完請求(修補請求、代物請求、不足分の引渡し)
 ②代金減額請求
 ③契約の解除
 ④損害賠償請求

 

〔現状有姿売買の意味〕
 東京地裁平成28年1月20日判決において、「一般に現状有姿売買とは、契約後引渡しまでに目的物の状況に変動があったとしても、売主は引渡し時の状況のまま引き渡す債務を負担しているにすぎないという売買であると解される」と判示されているように、現状有姿で引き渡すという約束は、目的物の品質に関する合意ではありません
 したがって、「現状有姿」と契約書に記載があったとしても、買主は、目的物のあらゆる不具合を受け入れなければならないということでは全くなく、契約不適合があれば、買主は、売主に契約不適合責任を追及することができます
 このように、「現状有姿のまま引き渡す」という条項は、単に引渡時の状況のまま引き渡すという意味でしかない以上、「契約不適合責任を負わない特約」とも意味合いは異なります。そのため、不動産売買取引の実務では、「現状有姿売買の特約」と「契約不適合責任を負わない特約」がセットでつけられることが多くなっています。

(2022年9月20日)