借地契約や借家契約における賃料(地代や家賃)の増額・減額請求

借地契約や借家契約における賃料(地代や家賃)の増額・減額請求

〔どのような場合に、賃料の増額・減額請求ができるのか〕
 建物を所有する目的での借地契約における地代や、建物の賃貸借契約における家賃については、借地借家法によって、地代・家賃の増額請求や減額請求が認められています。
 具体的には、①土地・建物に対する租税その他の負担の増減、②土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、③近傍同種の土地・建物の賃料に比較して不相当となったときのいずれかの場合に、当事者の一方的な意思表示によって増額請求や減額請求ができるとされています。
 そして、この要件を満たした請求の意思表示が相手方に到達した時点から、賃料は「相当額」に増額・減額され、将来に向かって効力が生じることになります。

 

〔増額請求や減額請求があった場合の実際上の流れ〕
 借地借家法の増額・減額請求権は、当事者片方の一方的な意思表示によって、当然に賃料が「相当額」に増額あるいは減額されることになりますが、「相当額」が具体的にいくらなのかよく分からないのが通常です。
 そこで、実際上は、いきなり借地借家法の増額請求権や減額請求権を行使するという形ではなく、賃料の改定に関する話し合いをして折り合える賃料の額を探り、合意できた額の賃料を以後支払っていく流れになります。
 しかしながら、当事者間でどうしても賃料の改定に関する話し合いがまとまらない場合には、裁判所の手続によって賃料の「相当額」を決めてもらう必要があります。この点、裁判所の手続はある程度時間がかかりますが、裁判で「相当額」が確定した場合には、確定時点ではなく、増額請求や減額請求をしたときにさかのぼって、賃料は「相当額」に増額・減額したことになります。
 裁判になるケースの具体的な流れとして、まず、賃貸人から増額請求があった場合には、増額に納得がいかない賃借人は、とりあえず、従前の賃料を支払い続け、その後、裁判所の手続で決められた「相当額」と比べて支払額に不足があれば、賃借人は、不足額に年1割の利息を付けて賃貸人に支払わなければなりません。これに対して、賃借人から減額請求があった場合には、減額に納得がいかない賃貸人は、とりあえず、従前の賃料の支払を請求できますが、裁判所の手続で決められた「相当額」と比べて、賃貸人が支払を受けた額が多くなるときは、多く受け取った額に年1割の利息を付けて賃借人に返還しなければなりません。

 

〔増額請求や減額請求を認めない特約の効力〕
①一定期間、賃料を「増額しない」旨の特約がある場合
 増額請求を認めない旨の特約は、賃借人に有利な内容なので有効な特約となり、その期間内は、賃貸人は賃料の増額請求ができません。
②一定期間、賃料を「減額しない」旨の特約がある場合
 減額請求を認めない旨の特約は、賃借人に不利な内容なので無効な特約となり、賃借人は、借地借家法に基づいて賃料の減額請求ができます。
 もっとも、これには一つだけ例外があり、「定期借家契約」においては、家賃の減額請求を認めない特約も有効となりますので、賃借人は家賃の減額請求ができないことになります(なお、定期借地契約においては、地代を減額しない旨の特約は原則どおり無効になります)。

(2022年10月15日)